「選別化」がすすむ日本のスキー場②(先進的スキー場)2008年03月08日 16時28分48秒

「交互に並びましょう」という表示(カナダ・バンフ)
 前回まで「日本の遅れたスキー場」について書いてきましたが、今回は世界と日本の先進的なスキー場について書いてみます まずお断りですが、私の住所からいって、すべての地域を網羅していませんから、必ずしも日本全体について客観的な書き方は出来ません 関東から甲越、東北地方のスキー場はまったく行けていません 海外も行っていない所も多いので、経験だけで書きます

 まず「先進的、洗練されたスキー場」とは何でしょうか? 簡単に言うと、「年齢、性別にかかわらず、客にとって快適でストレスが溜まらず、安全でしかも安く滑られる場所」でしょうか?言うのは簡単ですが、実際は難しいことです

 まず客観的条件を考えましょう まずコースづくりです 日本有数のスキー場であるニセコも昔は谷ごとにリフト運営会社が異なっていました 間違って隣のリフトに行くと、「このリフト券は隣のです」といわれ、乗れませんでした  しかしいつの間にか同地域が同一リフト券で乗れるようになり、「全山共通券」も出来ました しかしそういう問題は解決されてはいますが、全国どこのスキー場にもあります リフト券のIC化も大事なことでしょう

 大切なのことは同じ名前がついた地区内スキー場内(例:ニセコヒラフ、ニセコ東山・・)ではトラヴァース(移動)が容易であることです それは滑ってでもリフト・ゴンドラででも構いません 評判の良いスキー場はこのあたりがきちんと出来ています 最近外国人が増え始めた信州の白馬も志賀高原も一部を除いては高得点です

 さてカナダなどではリフト、ゴンドラや案内板がよく考えられてストレスが溜まりません 上の写真のように、混雑期でもリフト待ちの多くの列が半分半分と秩序正しく合流してゆきます これは「Alternation」といい、要するに「変わりばんこ」に合流します 割り込んでゆくのではなく、「お互い様」で譲り合いが原則です こういう考えは「割り込んだ方が勝ち」という発想では生まれません 社会のあり方の問題です 

 こういうことは「教育」から始まります 老舗のバンフやウィスラーではあまり問題ありませんが、素人・初心者が多いヴァンクーヴァー郊外のスキー場では、係員が棒を持って「君はまだ!そこの二人入りなさい」と「指導」しています この点は先述の日本のスキー場ではやっていませんが、上級者が多いだけあって「割り込み」はあまり見られません また世界的に見ても、「スキーパトロール」が多く、権限が強いスキー場ほど快適度が高いのです 残念ながら、日本のスキー場は遅れています

 またリフト待ち列には「シングル」という表示があって、一人で滑っている人や友人と一緒にリフトに乗らなくても良い人は、ここに並んで早くリフトに乗ります つまりリフトに空席が少なくなるので、輸送効率もよくなり合理的です しかし日本人はなぜか仲間とだけしか乗らなくて、他人を敬遠するので空席のあるリフトが増えます 多くの国内スキー場にはまだない所も多いですが、先述の日本のスキー場もいつの頃からか「シングル・ライン」が出来ました

 先進国を中心に「禁煙化社会」がすすむなか、カナダでは早くから「公衆の集まる場所では完全禁煙」が決まりました つまりリフト上はもちろんのこと、レストラン、トイレ内などではいっさいタバコは吸えません 吸えるのは「オープンエア(戸外)」だけです このことはタバコが嫌い、タバコが苦手、気管が弱い人や社会的弱者といった人たちには大変嬉しいことです その点ではニセコ、白馬などでは全国標準レベルよりは進んでいますが、まだトイレの入り口前に「喫煙コーナー」があって、さらに改善が望まれます
 
 次は同じ地区内や隣のスキー場の中の移動です 駐車場がタダなので、マイカーの客にとっては関係ないのですが、公共交通機関利用者や外国人にとってはある面「死活問題」です またちょっと食料品購入や近場の温泉にゆく場合も「足がない」ことは大問題です そういう意味では「リフト券保持者」は無料で乗れる循環(巡回)バスを持つニセコやこまめに地区内をまわり、安価に隣のスキー場とも連絡している白馬あたりはリピーターにも外国人にも評判がよいようです

 日本のスキー場がある地区は概して温泉が多いのですが、「リフト券保持者は入浴料が割り引き」とかホテル、ペンションには割引券が必ず置いてあるのも歓迎されています これらはスキー場運営会社、地区観光協会、バス会社、温泉、青年会議所あたりの連携がよく、協力体制が出来ているということです 上の二つの地区もまずまずは合格点でしょうか

 さて、「スキーブーム」が去ってしまった現在の状況は、スキー場のある地区の経済にとっては良いこととは言えませんが、それでも少しずつ「客」の増えている所があるのも事実です テレビの番組で何度も紹介されたニセコや白馬の「盛況」は主に外国人によるものです 

 もうかなり前になりますが、ニセコの「花園コース」がオーストラリア資本の買収されました それ以来、ニセコ・ヒラフを中心に、土地・ホテル・ペンションなどの不動産をオーストラリア資本が買っています オーストラリアの旅行会社が「雪の良いニセコで夏に滑ろう」と多くのツアーを送り込んでいます 季節が逆というのは大きなメリットです またリピーターからの口コミで参加する人や家族連れも大幅に増加しています 飛行機がシドニーから札幌へ直行しているのも魅力です ヨーロッパや南米で滑るよりも遙かに近く安いのです さらに香港、台湾、韓国などのアジア系スキーヤーも増えています

 それは日本側の取り組みも十分奏功しているようです 姉妹都市や観光協会などを通してキャンペーンを張ったり使節を送ったりしています また多くのホームページに英語のページを増設し案内や説明をいれ、申し込みも出来るようにしています 民間のホテル、ペンションでさえ、個人で宿泊の申し込みが出来るようにしました

 なぜこのような取り組みをしたのでしょうか? まず既述のようにブームが去ったこと、そしてそれを支えた年代が中高年になったこと、そしてもっとも中心となるべき若者の人口の絶対数が減少したことです 従って「客を増やす」ためには、基本的スキー人口を増やす必要があります それが「外国人」です 日本とは異なり、今アジアは発展途上で所得の上昇が顕著です 昔の「日本のバブル」がアジアに来ています

 幸い地元では対応が出来つつあります 役場が本腰になってきていることで通訳なども置くようになっています スキー場内では表示は英語、日本語併記で、ニセコなどは韓国語、中国語もあわせて表示しています 英語の看板を出している店も増えました まるで沖縄の米軍基地近辺に似ています 

 レストランもメニューを変えています 以前は「オーストラリア人=白人=西洋料理」というステレオタイプのメニューでしたが、最近は牛丼、うどん、親子丼などを注文して、箸を上手に使って食べるファミリーも増えています 「すしや日本食は健康食」という概念が彼の国でも広がっているようです アジア系移民が多いオーストラリア人自体が「マルチ文化」には抵抗がないのです

 こう見てくると、日本の「地方」でいちばん「国際化」されて来ているのは、一部のスキー場と言っていいでしょう そこには役所の努力よりも「民間の工夫と活力」といってもよい場面が見受けられます いずれ日本はさらにあらゆる面で「国際化」が進むと思われます スキー場もこれから起こるであろう諸問題も乗り越えて、さらに「国際的」になれば良いと思われます

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