かわいそうなエジプトのミイラ2013年07月07日 23時24分59秒

エジプトのミイラ ジンジャー・ジム
 久々12年ぶりに大英博物館に行った 三回目である 相変わらずのコレクションの多さであり、歴史上の「大英帝国」の強大さを再認識した

 そういうコレクションのなかで、毎回気になる展示がある エジプトのミイラと棺がずらっと並ぶ中で、つい「可哀相」と思う展示がある 通称「ジンジャージム」と呼ばれる裸のミイラである

 まあミイラだから裸なのであろうが、私には「長い安堵の眠りから引っ張り出されて晒し者」になっているように思われるのである そう考えると、他のミイラも少々気の毒だ 自分がその立場だったら嬉しいだろうかと考えてしまう

 この写真がその「ジムさん」なのだが、皆さんはどう思わるだろうか?お尻の穴まで曝されてきっと恥ずかしいだろう・・だからといって腰の部分に布をかけるのも変だし・・・ 

 「学問的に必要」といっても、研究が済んだら元の墓に戻して上げたらどうだろうか?死者にも尊厳がある気がしてならない

 内部リンク:大英博物館
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世界三大ガッカリのひとつ・人魚姫2012年10月13日 06時21分22秒

コペンハーゲン港の人魚姫
 このたび北欧三国を回ってきたが、デンマークではお決まりの「人魚姫像」に行って来た 首都アムステルダムの中央駅からエスターポート駅までは列車ですぐ、電車線に沿って歩いて港に入り20分くらいだった

 像は人だかりがしていたのですぐ分かった 大変な人気である 思っていたのより高い岩の上にあった 周りは工業地帯の港湾部である 向こうには造船所や工場らしい構造物が散見される さらに右奥には軍艦が繋留されていた アンデルセン童話の悲しい主人公が佇む場所としてはやや不適な場所である

 また像は下半身の上半分までが人間の姿で、足先部分だけが魚である 下半身が魚という「人魚」の一般イメージからはズレている 顔も思ったほどカワイくはない 

 だからというわけではないだろうが、この像は今までさんざんな目に遭ってきた 何度も像を壊され爆破され、海に打ち捨てられてきた しかし考えてみれば気の毒な話である 壊されるほどの理由は「彼女」にはない 設置場所も「彼女」のせいではない

 わたしもこれまで「世界三大ガッカリ」といわれる二つ、シンガポールのマーライオンとブリュッセルの小便小僧をみてきた 前者はカワユクもない像が水を出す「あーこれね」という素っ気なさ、後者は町中の想像していたよりずっと小さい像で、「有名な割にはちいさ!」という感じだった

 それでも巷間で喧伝されるほど愕然とするほどの「ガッカリ」ではない 勝手に期待した人が悪いのだ もともとそういう物なのだ この「人魚姫」もビール会社が作った物だ アンデルセンの悲しい童話からイメージが膨らみすぎて期待した方がわるいのかもしれない

やはり日本は照葉樹がいい!2009年10月30日 23時36分29秒

岡山森林公園の秋色
 一昨日、天気が良かったのもあって、岡山と鳥取県境にある「岡山県立森林公園」に行ってきた 公園とはいうけれど、はっきり言って山である しかしそれがまことによいのだ 「都市公園」は手が入りすぎてもう「自然」とは言い難い しかしここは園路や沼地や階段部分は手が入っているが、まわりはほとんど手を入れていない つまり自然の景色が楽しめる

 数日前にローカルのテレビで此処が「紅葉が真っ盛りです」と紹介されていたことから、「人があふれていろだろう」と思っていたら、平日と言うこともあって「ガラガラ」だった 映画館やショッピング・モールではないのだから、それも当然だろうか それが写真を撮る私には大変有り難かった しかも駐車場も入場も完全無料だ ただし管理事務所だけしかないのだが・・

 初めて行った場所であるが、歩いてみるとここはほとんどが照葉樹である つまり「紅葉の美しい場所」なのである 赤い実をたくさんつけた「マユミ」の木やナナカマドなどの実のなる木が目立つ そうなると鳥も来る

 またブナ、ミズナラなどの木も大変多く、足下にはドングリと枯れ落ち葉が敷き詰められている 奈良の吉野山辺のように杉とか檜ばかりで「美しくも魅力もない森」ではなく、いろんな個性の木が勝手に生えて好きに成長している 一見無秩序だが、トータルではバランスがとれ、色合い豊かな美しい森になっている 元来日本の森はこうであったはずだ 縄文時代人が狩りをしていたのはこういう森であった 腐葉土は次の土を造り、ドングリは生き物たちの餌になった 

 しかし現代になってからは「儲かる」ということで、針葉樹を植えた それが我が国にある程度の恩恵をもたらしたことも事実だが、今となっては安い外材に押されて林業は衰退した 悪いことに後継者もいない森は下草刈りや枝打ちもできず荒れ始めている また杉花粉が「花粉症」の元凶要素の一つとして国民を悩ませている

 こうなると照葉樹の森の方が明らかに「豊かで合理的である」 明治頃までは村では村人が落ち葉や薪を取りに山に入っていた 石油、石炭の化石燃料よりははっきり「地球に優しい」 そして秋のこの素敵な色合いは、人を優しく心を豊かにさせる 山中を歩きながらこういうことを考えていた 杉林をいくら歩いても、人は優しくはなれない気がする

 やはり日本人には照葉樹がいちばん良い こう考えると、世界遺産の白神山地はやはり素晴らしい財産であろうか 大切にしたい

(内部リンク)・・岡山県立森林公園
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クイーンズタウンの戦争犠牲者慰霊碑2009年09月12日 19時24分50秒

ニュージランド、クイーンズタウンの慰霊碑
 ニュージランド南島の南部アルプスにあるクイーンズタウンは素敵な町である 名前の通り、「女王様も好きになるだろう町」なのだ 氷河は湖やアルプス風の山並みを作った 何度来てもまた来たくなる町なのだ それに中心地は「歩ける範囲」なのが良い

 私が毎年泊まるホテルは、「・・・・レイクサイド」の名のとおり湖畔にある 朝な夕なに湖畔を歩くと、海でもないのにカモメや水鳥が集い姦しい 人々もパンくずを持ってどこからともなく湖畔に集まる 鳥たちはあまり人間を恐れない あまり虐められたことがないのだろう

 そういう湖畔には遊歩道がある 毎年歩いていた道だが、今年はふとアーチ(小さな門)のレリーフの字に目がとまった それにはこう書いてあった 「1914-1918 SERVICE ABOVE SELF」、そして門の左右には「戦没者の氏名」が彫られてあった 要するに一般で言う「戦没記念碑」である

 第一次大戦当時、英連邦に属していた自治領ニュージーランドとオーストラリアは、初めての対外戦争として三国協商側 に参戦した 多くの戦闘のなかでドイツに支援されたオスマン・トルコとの「ガリポリの戦い」はあまりにも有名である 結論から言うと、死者数は同等であったが、イギリス・ニュージーランド・フランス・オーストラリア側の大敗北であった かくして連合軍はトルコから撤退する

 この時参加した二つの自治領軍はアンザック(ANZAC)軍と呼ばれたが、大半は志願兵(volunteer)であった この戦いでの戦死者はオスマン軍86000余にたいして、イギリス軍21000余、フランス軍10000、豪州軍8700でニュージーランド軍は2700であった ボーア戦争以外初の対外戦争であった両国では従軍記者により戦況が詳細に報道され、大苦戦の様子も逐一伝えられたため、両国民に衝撃を与えたという 現在「ガリポリ上陸の日」を両国とも「アンザック・デー」として祝日としている またこの戦いは映画にもなった

 話を戻そう 上記の碑(門)はその戦いの戦死者を慰霊するために作られた物であろう 第一次大戦も同盟・協商両側とも「完全な正義の戦い」とはいえないが、徴兵でもない志願兵が多数死んでも、「国に為に尽くした」として町中の公園に出身者を慰霊しているだ

 翻ってわが国では、「国家」が国家護持のため死んだ者を皇居近くのある場所に弔っている 国のために命を捧げた者を鎮魂するのは当然だが、あの場所には「国家に楯突いた」西南戦争の兵たちは祀られていないという そうすると明治維新に「日本のためにおおいに働いた」こともある偉大な西郷隆盛は祀られていないのであろうか 何かおかしい

そう考えてみると、慰霊碑、慰霊場所は仰々しい建物に祀るより、出身地の町中にさりげなく置かれる方がよい 後世の市民生活の場所にあることにより、彼らの行いと記憶は永久に生き続ける そこには特定の宗教もたいそうな儀式もない 彼らは市民と一緒に生きている 目にする人々の「愛国心」も増すだろう 西洋諸国を旅すると同様な慰霊碑を目にすることが多い(もちろん聖堂・教会内にも慰霊碑もメモリアルはあるが・・)

 先日、高野山の奥の院に行った 参道両側には大名などの立派な墓が並んでいた それらの中に島津氏による「(慶長の役)高麗陣敵味方戦死者供養碑」というのがあった 日本に攻め入って日本人を殺した敵兵も併せて祀る-というのが「日本武士道の鑑」といわれているという 同様な物が博多湾岸にあった 「蒙古兵の首塚」といわれる物である 「死んでしまえば敵も味方も同じ」という発想である そういう意味では「敵ながら天晴れ」という日本の「武士道」の伝統も明治以後は衰退したということであろうか
 
参考文献:「ガリポリの戦い」(Wikipedia)

ジイさま曰わく「iPodはええのう」2009年09月07日 15時51分50秒

飛行機座席背もたれの便利なUSB端子
「うーん、やっぱりiPodはすごい!」 悔しいけどこう言わざるを得なかった 国際線の機内のことである

 わたしはいわゆる「ベイビーブーマー」のひとりである 若い頃はLPやEPレコード、後になってカセットテープやオープンリールテープで「青春時代」を過ごした者である

 社会人になってかなり経ってCDが登場した そのころのCD は発展途上で価格が高い上、音も切れはよい代わり硬質で大好きなクラシック音楽には不向きと思われた

 元々私はコロンビア・デノンの「2トラ38」という当時の放送局が使っていた様なテープレコーダーで、ソニー製C38Bというプロ級マイクを使って「生録」を趣味にしていた その音は新鮮でダイナミック・レンジも広く、市販のレコードなぞ問題にしていなかった

 だからCDが普及しても長い間テープのアナログの音を良しとしていた ところがある時ある場所でCDのクラシック曲を聴いた時、目から鱗がパリパリと落ちた 黎明期のあの「いやらしい音」が消え、自然な音に変わっていた それからというもの、数百本あったテープをCDに置き換えていった

 その後はマイカー車内も旅のお供もCDプレーヤーであった 多い時は20枚くらいは海外に持って行ったり、また海外でも購入した こうしてCDコレクションも数百枚になった

 ところが最近は若者を中心にいつも「iPodにイアフォーンまたはヘッドフォーン」という姿が多くなった それでも「頑固なオッサン」は自分に「CDの方が良いに決まっている」と言い聞かせてきた 「あんな物は邪道だ」と

 ある日、妻が「旅行にCDプレーヤーは止めて、iPodにしたら?」と言った 彼女は仕事がらみで、すでに一年以上前からiPodを使っていた 騙されたつもりで持参することにした 機内でもホテルでも聞きまくった 小さくて軽いし、CDの様にディスクを変える必要もない はじめは機能の使い方に抵抗があったが、これも慣れると合理的である

 バッテリーも何とかもっていたが、とうとう帰国の機内でアウト! しばし呆然であったが、前席の背もたれにUSB端子があることに気がついた 試しに繋ぐとすぐに充電が始まり、20分ほどでOKになった NZ機もエライが、iPodもエライ

 「うーーん、これは便利だ すごい!」と唸ってしまった アップル社はCPの分野でもアイデアで先駆者になった 最近ではiPhoneにこのiPod、アイデアと技術力、開発力がなければこういう製品はできない 類似品(ウォークマン)を作ったソニーの製品もよく売れているという

 「日本はすでにある物を改良するのは得意だが、無い物から作り上げていくのは苦手」と言われてきた やはり独創力こそが大切である エジソンを生んだのもアインシュタインが活躍したのもアメリカである (ただし経済・金融関係ではアメリカはもはや二流になってしまったが・・)

 いま日本では理系の学生が減り、「技術立国も危ない」と言われている 団塊の世代が引退し、技術の伝承も十分ではない 日本の教育も金太郎飴のような画一教育ではなく、もっと独創的な人間を育てる教育に変えないと、もはや世界をリードすることは難しいかもしれない

ますます厳しくなるアメリカ入国2008年12月24日 17時39分24秒

 前回、アメリカ国籍航空機内での「エコノミークラスのみのアルコール類有料化」の不合理性について書いた

 今回はそのときの「入国審査」について書いてみる 
私たちの入国はサンフランシスコ(SFO)だが、目的地はデンヴァー(DEN)であった 従ってSFOで入国し、後は国内線乗り換えということになる

 どの国でも同じだが、降機後は空港内建物を大きく移動してから「イミグレイション(入国審査)」にむかう 普通は外国人と国籍保持者と外交官・航空機アテンダント等に大きく別れている 

 当然私たちは「外国人カウンター」の前に並ぶ しかし列整理のオフィサーが空いている「米国籍」カウンターを指示した そこで私は「まあいいか」と並び、呼ばれるとパスポートと入国カードをもって係官の前に立った

 彼は日本国パスポートを出した私に怪訝そうにこう言った
  「ここはアメリカ人専用カウンターだが知っているのか?」
私 「知っている あそこのオフィサーがここに並べといったんだ」
係 「フム この旅の目的は?目的地はどこか?」
私 「スキーだけだ デンヴァー経由でヴェイルだ」
係 「職業は何か?」
私 「リタイアしている」
係 「金は持っているか?」
私 「それはキャッシュという意味か?およそ200ドル 残りはT/Cだ」
係 「帰りの航空券は持っているか?見せろ」
私は電子航空券を見せた 彼は丁寧にそれをチェックした
係 「これから写真と指紋を採る 顔をこちらに向けてここを見ろ <パシャ> 指を二本指紋を採るので、まず親指をここに入れろ 次に人差し指を入れろ 動くな! 今のはうまく写ってないからもう一度だ・・」
私 「これは初めてだから慣れていない」
係 「おそらく最初で最後だろう」

 そう言いながら彼はパスポートを返してくれた ほとんど笑顔はなかった 「観光者」を「出稼ぎ入国者」のような感じで扱われ、楽しくはなかった その点、隣国カナダのオフィサーは、笑顔で丁寧ななおかつユーモアのこもった物言いをする

 閑話休題、あと20日ほどでこの国はもっと厳しい面倒くさい入国手続きを外国人に課すことが決まっている 「ESTA」(エスタ)という 実施開始は2009年1月12日からで、それまでに(出国前)コンピューターから米国のESTA公式サイトにアクセスし、いろいろ情報を入力し、「許可」をもらわなければならない これがないと米国には入国できない ネットをしない者には、JTBなど旅行代理店に4000~6000位払って代行してもらう

 あの「9/11」事件以来、この国は「ヒステリックなキリスト教原理主義」になって、「敵か味方か」という単純な論理で行動し続けてきた その結果、ますます多くの国の国民が「アンチ・アメリカ」になってしまった 今回のエスタも「非敵性国民と敵性国民(テロリスト等)」を選別する目的を持つのであろう まるで「ハリネズミ」のようである

 しかしそれだけやっても水は漏れるかもしれない 諸問題の根元は「世界の貧富の差」にある アメリカは「北風」よりも「太陽」にならなければ、問題は解決しないかもしれない

参考:外務省「渡航関連情報」に詳細
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/us_esta.html

どうなってしまったのか?日本人!2008年03月28日 19時11分03秒

 最近訳の分からない犯罪事件が多すぎる 今日も「ヨミウリオンライン」にこういう記事があった 見出しは大きくないが、大変嘆かわしいニュースである 読売サイトから引用する(以下転載)

「三重県警松阪署は28日、路線バスの中で携帯電話の通話を注意した男性に暴行を加え、死亡させたとして同県大台町佐原、無職中田義一容疑者(58)を傷害致死容疑で津地検に送検した。

 調べでは、中田容疑者は26日午後4時40分ごろ、同県松阪市愛宕町を走行中の松阪競輪場発松阪駅行きの臨時バスの車内で、同県四日市市小杉町、無職鈴木護さん(61)から、携帯電話の声が大きいと注意されたことに腹を立て、鈴木さんの胸ぐらをつかんだり、体を座席に押さえつけたりする暴行を加えた疑い。

 中田容疑者は松阪駅で降りたところで、バスの運転手の通報で駆けつけた同署員に暴行で現行犯逮捕された。鈴木さんは事情聴取中に容体が悪くなり、病院に運ばれたが、27日になって腹膜炎で死亡した。

 バスには約30人の乗客がいたが、だれも注意しなかったという。

(2008年3月28日18時41分 読売新聞/以上転載記事)

 最後の行を読むと、日本人の人間性がここまで落ちてしまったのかと悲しくなる 被害者は正しいことを言ったのだろうが、どうして誰も声を上げなかったのか? 「自分さえよければ・・・、自分もやられたくない」という気持ちも理解できるが、一人ではない 勇気を持ってまわりが対応できなかったのか?

 この事件を読むとき、関西の湖西線だったか、以前JR列車の公衆の面前で若い女性がレイプされた事件を思い出す あの場合も乗客は誰一人助けようとはしなかった 後で考えれば、いくらでも助ける方法はあった いつから日本人はこんな人間に成り下がったのだろうか? 乗客の中で幾分でも心ある人はずっと心が痛むに違いない

「選別化」がすすむ日本のスキー場②(先進的スキー場)2008年03月08日 16時28分48秒

「交互に並びましょう」という表示(カナダ・バンフ)
 前回まで「日本の遅れたスキー場」について書いてきましたが、今回は世界と日本の先進的なスキー場について書いてみます まずお断りですが、私の住所からいって、すべての地域を網羅していませんから、必ずしも日本全体について客観的な書き方は出来ません 関東から甲越、東北地方のスキー場はまったく行けていません 海外も行っていない所も多いので、経験だけで書きます

 まず「先進的、洗練されたスキー場」とは何でしょうか? 簡単に言うと、「年齢、性別にかかわらず、客にとって快適でストレスが溜まらず、安全でしかも安く滑られる場所」でしょうか?言うのは簡単ですが、実際は難しいことです

 まず客観的条件を考えましょう まずコースづくりです 日本有数のスキー場であるニセコも昔は谷ごとにリフト運営会社が異なっていました 間違って隣のリフトに行くと、「このリフト券は隣のです」といわれ、乗れませんでした  しかしいつの間にか同地域が同一リフト券で乗れるようになり、「全山共通券」も出来ました しかしそういう問題は解決されてはいますが、全国どこのスキー場にもあります リフト券のIC化も大事なことでしょう

 大切なのことは同じ名前がついた地区内スキー場内(例:ニセコヒラフ、ニセコ東山・・)ではトラヴァース(移動)が容易であることです それは滑ってでもリフト・ゴンドラででも構いません 評判の良いスキー場はこのあたりがきちんと出来ています 最近外国人が増え始めた信州の白馬も志賀高原も一部を除いては高得点です

 さてカナダなどではリフト、ゴンドラや案内板がよく考えられてストレスが溜まりません 上の写真のように、混雑期でもリフト待ちの多くの列が半分半分と秩序正しく合流してゆきます これは「Alternation」といい、要するに「変わりばんこ」に合流します 割り込んでゆくのではなく、「お互い様」で譲り合いが原則です こういう考えは「割り込んだ方が勝ち」という発想では生まれません 社会のあり方の問題です 

 こういうことは「教育」から始まります 老舗のバンフやウィスラーではあまり問題ありませんが、素人・初心者が多いヴァンクーヴァー郊外のスキー場では、係員が棒を持って「君はまだ!そこの二人入りなさい」と「指導」しています この点は先述の日本のスキー場ではやっていませんが、上級者が多いだけあって「割り込み」はあまり見られません また世界的に見ても、「スキーパトロール」が多く、権限が強いスキー場ほど快適度が高いのです 残念ながら、日本のスキー場は遅れています

 またリフト待ち列には「シングル」という表示があって、一人で滑っている人や友人と一緒にリフトに乗らなくても良い人は、ここに並んで早くリフトに乗ります つまりリフトに空席が少なくなるので、輸送効率もよくなり合理的です しかし日本人はなぜか仲間とだけしか乗らなくて、他人を敬遠するので空席のあるリフトが増えます 多くの国内スキー場にはまだない所も多いですが、先述の日本のスキー場もいつの頃からか「シングル・ライン」が出来ました

 先進国を中心に「禁煙化社会」がすすむなか、カナダでは早くから「公衆の集まる場所では完全禁煙」が決まりました つまりリフト上はもちろんのこと、レストラン、トイレ内などではいっさいタバコは吸えません 吸えるのは「オープンエア(戸外)」だけです このことはタバコが嫌い、タバコが苦手、気管が弱い人や社会的弱者といった人たちには大変嬉しいことです その点ではニセコ、白馬などでは全国標準レベルよりは進んでいますが、まだトイレの入り口前に「喫煙コーナー」があって、さらに改善が望まれます
 
 次は同じ地区内や隣のスキー場の中の移動です 駐車場がタダなので、マイカーの客にとっては関係ないのですが、公共交通機関利用者や外国人にとってはある面「死活問題」です またちょっと食料品購入や近場の温泉にゆく場合も「足がない」ことは大問題です そういう意味では「リフト券保持者」は無料で乗れる循環(巡回)バスを持つニセコやこまめに地区内をまわり、安価に隣のスキー場とも連絡している白馬あたりはリピーターにも外国人にも評判がよいようです

 日本のスキー場がある地区は概して温泉が多いのですが、「リフト券保持者は入浴料が割り引き」とかホテル、ペンションには割引券が必ず置いてあるのも歓迎されています これらはスキー場運営会社、地区観光協会、バス会社、温泉、青年会議所あたりの連携がよく、協力体制が出来ているということです 上の二つの地区もまずまずは合格点でしょうか

 さて、「スキーブーム」が去ってしまった現在の状況は、スキー場のある地区の経済にとっては良いこととは言えませんが、それでも少しずつ「客」の増えている所があるのも事実です テレビの番組で何度も紹介されたニセコや白馬の「盛況」は主に外国人によるものです 

 もうかなり前になりますが、ニセコの「花園コース」がオーストラリア資本の買収されました それ以来、ニセコ・ヒラフを中心に、土地・ホテル・ペンションなどの不動産をオーストラリア資本が買っています オーストラリアの旅行会社が「雪の良いニセコで夏に滑ろう」と多くのツアーを送り込んでいます 季節が逆というのは大きなメリットです またリピーターからの口コミで参加する人や家族連れも大幅に増加しています 飛行機がシドニーから札幌へ直行しているのも魅力です ヨーロッパや南米で滑るよりも遙かに近く安いのです さらに香港、台湾、韓国などのアジア系スキーヤーも増えています

 それは日本側の取り組みも十分奏功しているようです 姉妹都市や観光協会などを通してキャンペーンを張ったり使節を送ったりしています また多くのホームページに英語のページを増設し案内や説明をいれ、申し込みも出来るようにしています 民間のホテル、ペンションでさえ、個人で宿泊の申し込みが出来るようにしました

 なぜこのような取り組みをしたのでしょうか? まず既述のようにブームが去ったこと、そしてそれを支えた年代が中高年になったこと、そしてもっとも中心となるべき若者の人口の絶対数が減少したことです 従って「客を増やす」ためには、基本的スキー人口を増やす必要があります それが「外国人」です 日本とは異なり、今アジアは発展途上で所得の上昇が顕著です 昔の「日本のバブル」がアジアに来ています

 幸い地元では対応が出来つつあります 役場が本腰になってきていることで通訳なども置くようになっています スキー場内では表示は英語、日本語併記で、ニセコなどは韓国語、中国語もあわせて表示しています 英語の看板を出している店も増えました まるで沖縄の米軍基地近辺に似ています 

 レストランもメニューを変えています 以前は「オーストラリア人=白人=西洋料理」というステレオタイプのメニューでしたが、最近は牛丼、うどん、親子丼などを注文して、箸を上手に使って食べるファミリーも増えています 「すしや日本食は健康食」という概念が彼の国でも広がっているようです アジア系移民が多いオーストラリア人自体が「マルチ文化」には抵抗がないのです

 こう見てくると、日本の「地方」でいちばん「国際化」されて来ているのは、一部のスキー場と言っていいでしょう そこには役所の努力よりも「民間の工夫と活力」といってもよい場面が見受けられます いずれ日本はさらにあらゆる面で「国際化」が進むと思われます スキー場もこれから起こるであろう諸問題も乗り越えて、さらに「国際的」になれば良いと思われます

選別化がすすむ日本のスキー場①(取り残されたスキー場2)2008年03月06日 12時13分23秒

スキー場全コースの様子が分かりやすいカナダスキー場の表示板
 昨日、「取り残されたか?中国地方の老舗スキー場、大山」で書いたことの続きを書いてみます 当ブログの親HPをすでに見てくださっている方は、世界各地のスキー場の写真を目にされたことでしょう あちこちのスキー場を巡っていると、いろんなことに気づくのです

 世界と日本のスキー場を比較する場合、「遅れたスキー場」を引き合いに出すとよく分かります ただ昨日少し書いたように「進んだスキー場」があることも先にお断りしておきます

 さて大山に戻ります 「駐車場が有料」というのは、関西方面ではふつうです また「平日のみ無料」というスキー場も多いのです だからこれは大山だけの問題ではありません 土地の所有権や生活権とも関わってきますので、難しい問題です しかし中部や他の地方では「広い駐車場がずっと無料」ということを考えると、客の立場からは納得がいきません 

 たしかに先述の地域は「過当競争」にさらされており、「自分のところだけが駐車料を取る」ことは、即客の減少につながるからです しかし反面、四国九州のスキーヤーやボーダーは長い時間運転し、高い高速料金や高いガソリンを使ってまではるばるやってきているのです

 つぎに、「コースの設計が古い」ことですが、もうこれは仕方がありません 直しようがなくお金もないからです さらに大山は「国立公園内」という制約があります 同じ中国地方でも新しい設計のスキー場には比較的客が来ています 若い人たちが好むような「おしゃれな」作り方をしているのです

 付け加えて、そこらのスキー場は高速や国道からのアクセスも良くて、マイカー族は来やすくなっています 大山の場合はいつも通っていた桝水からスキー場へ抜けるルートが「積雪のため閉鎖」になっていました しかし高速出口からその場所までの5kmほどの道中に「目に付く看板や表示」はありませんでした おかげで大回りをして時間をロスしてしまいました スキー場と地元も連携もないようです もう地元にとっても、スキー場は存在感がなくなったのかもしれません

 「リフト券が高い」問題はこういうことです 信州でも5000円前後のスキー場はたくさんあります 有名なスキー場は大体そうです しかしその場合でも、リフト料金の中に1000円のランチ(補助)券が含まれています そうでなくても高いので、「スキー場の昼飯」が安くなるのは魅力的です 「リフト券がICでなくまだ紙製」というのは、あまり実害はないのですが、イメージ的に古くさいイメージがします たった一つのメリットは「IC保証料金(通常千円)が不要」ということでしょう

 「時代に合わせた経営の工夫がない」とか「客やリピーターの意見が採り入れられない」問題は一口で言うと「経営体質が古い」と言うことで、ちょうど「同族経営のワンマン会社」のような物です 「シーズン券」を持っている指導員の意見さえ受け容れられないのです 風通しが良くならない限り、何も変わらないでしょう また時流や客のニーズを敏感に取り入れるには、経営側の「頭の柔軟さと発想の転換」がいるのですが、端で見ている限り変わる兆しはありません

 こういう経営側の姿勢に関連して、コースのリフトで働く人たちの「従業員教育」にも大いに問題があります すでに書いたように、私も久しぶりの大山スキー場だったので、一番下の連絡リフトの係りに「リフト券売り場はどこですか?」と訊きました 彼は鼻毛を抜きながら、黙って向こうの建物を指さしました 世界各地でこんな係り員は初めてで、「新鮮な驚き」がありました 他を見てもほとんどの係員がアルバイトで、ここへの愛着心もあまりないようです

 何年も前から「室内全面禁煙」というただひとつの評価できる「国際」コースのロッジで早めの昼食を取りました アルバイトの女の子は丼の上にマヨネーズをかけようとしていました 私は平素は高カロリーの物には手をつけません 「あっそれはかけなくて良いから・・」 その言葉を無視して最後まで手を止めず決まった量をかけ終えてから私に出しました 傍にいた中年女性もただ笑っているばかりでした アメリカ、カナダあたりでは、ホットドッグ一つでも、「何を載せるか?」としつこく訊きます 私にはうるさかったのですが、今となっては、こちらの方が「民主的」とさえ思われます

 さてこのように「日本の遅れたスキー場」のことばかり書いてきましたが、「先進のスキー場」もたくさんあるのです それについては次回書くことにします

取り残されたか?中国地方の老舗スキー場、大山2008年03月05日 22時46分17秒

西日本の老舗、大山スキー場
 寒波が来て新雪が積もったので、先週の平日に大山スキー場に行ってきました このスキーシーズンの「滑り納め」にしようと思ったからです ここは二十年前の私がスキーを始めた縁ある場所です それにもかかわらず、ここ数年は年一回も行っていませんでした

 それは西日本全体の雪が良くなく、おもに雪質の良い北海道や信州で滑っていたからです しかしここに来なかった理由は他にもたくさんあります 

1 駐車場が有料のうえ、駐車場からいちばん遠いコースに行くには大変歩いたり漕いだりすること 、むかしから有名な事実です
2 コースの設計が古く、各コースに魅力がないことや各コース間の移動が東日本のスキー場より遙かに不便です これはもともと各コースの地権の複雑さがあったようですが・・
3 リフト券が4800円と高く、しかもまだ紙のリフト券でICチップを採用する動きも見られません また東日本なら駐車場はタダだし、便利なICチップのリフト券で、高めの4800円もだすと1000円の昼食券が付いてきます また多くのスキー場はもっと安い値段です
4 経営会社の体質か、「時代の流れにあわせて変化させる」という発想が見られません 施設自体も昔のままで、時代に合わせた工夫が見られません スキーブームのころなら黙っていても、遠くは九州からも客が押し寄せたものですが・・ そういう時代のイメージのままで胡座をかいているとしか思えないのです
5 全国的にスキーブームが去って、どこもスキー場は平日などは閑散としています 現在は若いスノーボーダーたちがかろうじてスキー場を支えています しかしこのことは、ふつうのスキーヤーからはあまり歓迎されていません その理由はここでは書きません 大山も営業上の理由で「ボーダー禁止」から「ボーダー全山OK」となりましたた このためそういうスキー場に行かなくなったスキーヤーもいるのです
6 今、日本で外国人などでおおいに賑わっている北海道・ニセコや信州・志賀、白馬などは外国にまで手を広げ、宣伝や企業努力をしてきたといいます そして、いったん来るようになると魅力あるスキー場は黙っていても客は来るのです 口コミです ニセコは最近オーストラリア人の客の方が多いのです 大山ではそういう発想や努力が見られません また古くからの客がいろいろ意見を言っても聞こうともしないそうです 指導員の資格を持つ方がそう言っていました
6 もうひとつ、大山のスキー場の係りは「お客様」という意識がありません 私は世界各地のスキー場の係りを見ていますが、いちばん遅れている部類です・・とあまりに長すぎたので、今回はここまでにしておきます 残りは次回に・・